【季節の箱庭】
乱歩 


≪1.プラットホームオーケストラ≫



ーーー彼女は、最後になんと言っただろう?



昨晩の記憶を、今になって必死に思い起こそうとしている自分がいた。

結婚を前提に付き合っていたつもりだった。
少なくとも僕は。

何がきっかけだったのだろう。
その日は朝から彼女は不機嫌だった気もするし、その前日の夜からだったような気もしてくる。
考えれば考えるほど、思考のループに陥ってゆく。残念なことに、これは負のループだ。



そんな大切な人を失った翌日も、普段と変わらず出勤しているあたりが、僕がこれまでに培ってきた人間性なのかもしれない。

勤務時間中も彼女のことを考えていた。



そして定刻を迎える。
正確に言うと、普段よりも若干早めに勤務時間を終えた。

帰路、足は普段と変わらず最寄りの駅に向かう。
いつもより、半刻ほど早く到着予定の電車を待つ。

プラットホームはいつも通りの人の群れ。
まるで肺呼吸をしているかのように、電車は人を吸い込み、そして同じだけ吐き出す。街は生きているのだ。



「早まっちゃいけない!」

ぼんやりと電光掲示板を眺める私の耳に、唐突にそんな声が飛び込んできた。

(何事だろうか?)

声のした方向へ首を捻ると、2人の男女を取り巻く様にして、人集りが出来ていた。


それは何らかのトラブルのようだった。
あまり進んで関わりたくはないけれど、そんな思いとは裏腹に、聞き耳を立てている自分が嫌になる。

人々の雑踏に掻き消され、その全てを聞き取ることは叶わなかったけれど、会話の所々に「死なせて」「飛び込み」などという不穏な会話が聞こえてくる。


危うく僕は、飛び込み自殺の目撃者になるところだったようだ。
走っている電車に身を投げれば、その後がどうなるかは想像に難くない。
 

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